活用事例

実際に制作した人生紙芝居のエピソード集です。

マイナスと思っていた人生が、人の役に立つ人生へ

戦争で夫を亡くした過去

デイサービスの利用者Kさんは戦争未亡人。当時では珍しかった恋愛結婚だったそうですが、太平洋戦争が始まり、夫は幼い子ども二人とKさんを残して出征し、南の島で敵と戦う前に餓死してしまいました。遺留品は一つもなく、届けられたマッチ箱の中には、その島のものだという砂が入っていたそうです。

その後、Kさんは女手一つで子どもたちを立派に育て上げましたが、舅にきつく当たられて、いくつもの仕事を掛け持ちし、とても大変な思いをしたそうです。そのため、「私は戦争で人生を台無しにされた」がKさんの口癖でした。

戦争の愚かさと平和の尊さを伝える紙芝居

子どもが大好きなKさん。小学校の通学路沿いに家があり、毎日、登下校の子どもたちに声をかけるのが楽しみでした。そこで、Kさんの誕生日が近づく中、デイサービスでKさんの人生紙芝居を制作し、それを、小学生の子どもたちに見てもらおうと計画しました。紙芝居の内容は、戦争で夫を亡くしたKさんの悲しい気持ちを伝え、戦争は二度としないで欲しいという子どもたちへの願いを込めることにしました。

完成した紙芝居を持って小学1年生の教室を訪問

Kさんを連れて、地元小学校の1年生の前で、人生紙芝居を上演しました。戦争と平和という難しいテーマですが、“紙芝居”の世界に生徒たちは一気に引き込まれ、皆、食い入るように観ていました。Kさん自身も昔のことを思い出しながら一緒に鑑賞し、台詞の途中でもお構いなしに、「ほんと、そうだったのよね~」「うん、うん、お父さんの足にしがみついて、子どもが泣くのよ~」と身振りをつけながら、こちらも熱演されています。そして、人生紙芝居が終わるや否や、横に座っている1年生の腕をつかみ、「戦争はしちゃダメだよ、分かった?」と入れ歯が飛び出さん勢いで語りかけます。「うん、分かった」と答える子どもに、Kさんは満面の笑みを浮かべます。

負の人生が、人の役に立つ人生に変わった瞬間

このことをきっかけに、「戦争で人生を台無しにされた」というKさんの口癖は、「戦争は二度としないと、子どもが私に誓ってくれた」に変わります。Kさんが90余年の人生を閉じるまで、残りはわずか1年でしたが、最後の最後に、自分の人生についての解釈が、少しだけ明るいものに変わったことが救いでした。

紙芝居という形で表現したからこそ、90歳近い年齢差を楽に飛び越え、確かに伝わるものがあったと思います。生きた証、人生経験を後世に遺す。世代を超えて伝承されるべきものは、戦争と平和の他にも、自然への感謝や、家族の愛、動物との絆、仕事への情熱、命の大切さ等、いろいろなテーマが考えられます。