活用事例
実際に制作した人生紙芝居のエピソード集です。
旅立ちの瞬間、人生紙芝居でお見送り
家のため、地域のために、フル稼働だったHさん
農家に嫁いだHさんは、子だくさんで、田畑の作業や乳牛の世話、大家族の家事にと、忙しい日々を送ってきました。さらに、周りからの人望も厚く、女性会や農協支部の活動などでも、リーダー的な役割を担ってきました。そんなHさんも、長年の重労働が響いて、年をとるにつれて、ひどい腰痛に悩まされるようになり、やがて車椅子生活となります。認知症の症状も出てきて、私がデイサービスで初めてお会いしたのは、その頃のことです。
Hさんと言えば竹皮まんじゅう
デイサービスでは、Hさんが何百回と作ってきた竹皮まんじゅうの作り方を彼女に教えてもらいながら、皆で作っておやつに食べました。成型したまんじゅうを竹の皮にくるんで蒸し上げるため、「竹皮まんじゅう」と呼ばれ、地元では昔から家庭のおやつとしてよく作られていたソウルフードです。
彼女の作る竹皮まんじゅうはオリジナリティがたっぷりで、まんじゅうの皮にカボチャを練りこみます。なので、仕上がりが優しいオレンジ色のまんじゅうになります。さらに、中のあんこが小豆ではなくて、乾燥そら豆から作ったあんこを使います。だから誰もが、これはHさんの作った竹皮まんじゅうだと分かります。お祭りの準備の手伝いの時、あるいは、住民総出で用水路の大掃除などをするクリーン作戦の時、農協の研修旅行の際、等々、地域の人たちの多くが、差し入れされたHさん特製竹皮まんじゅうを口にしたことがあるのだそうです。
デイサービスで久しぶりに竹皮まんじゅうを作ったHさんですが、認知症になっても体はしっかりと覚えており、彼女がまんじゅうの皮であんこを包む手つきは、周りの誰よりも手早く、かつ、きれいな仕上がりで、職員も舌を巻きました。デイサービスのお年寄りたちも、「竹皮まんじゅうか、懐かしいね」、「これこれ、Hさんの竹皮まんじゅう。昔、食べたよ」と笑顔になり、その様子に満足気なHさんでした。
人生紙芝居のタイトルは『まんじゅう親分』に決定
面倒見の良い親分肌のHさんが、家でも地域でも、常に周りの人のために大奮闘していた姿を人生紙芝居の中では描いていきます。腰を曲げての田植えのシーン、乳牛の乳しぼりのシーン、大家族のために大鍋で夕食を作っているシーン、仲間と一緒に農協の研修旅行に出かけるシーン等、認知症が始まっているHさんの記憶に働きかけ、少しでも思い出してくれそうなシーンを選んで絵を描きました。そして、紙芝居の最後には、Hさん特製竹皮まんじゅうが登場。仲間と共にまんじゅうを食べて、皆が笑顔になるという話で終わりになります。
印象的なタイトルは、Hさんの性格がよく反映されていて、観る人たちのワクワクを一気に高めてくれるものになりました。
デイサービスを卒業し、完全在宅療養へ
Hさんの体の動きは益々悪くなり、ある時からデイサービスの利用を終了し、お嫁さんの手厚い介護を受けつつ、自宅で訪問入浴や訪問看護などの訪問系のサービスを受けながら療養していくことになりました。そのため、その後はHさんとの関りがなくなってしまったのですが、数年後、お嫁さんから、Hさんがお亡くなりになったとの電話を頂きました。
Hさんの呼吸が変わって、いよいよ最期の時を迎えるという状況で、枕元に集まっていた子どもたちや孫たちの中から、人生紙芝居をHさんと一緒に皆でみようという声が上がり、家族の一人が読み手になって、その場で紙芝居を演じられたそうです。おもしろおかしいシーンでは思わず家族から笑い声も起きて、その中でHさんは天国へと旅立っていきました。お嫁さんは「お義母さんは賑やかなのが好きな人だったから。家族の笑い声を耳元で聞きながら、幸せな気持ちで逝ったと思います」と伝えて下さいました。
ご臨終の場に人生紙芝居が寄り添えたなんて、思いもしないことでした。でも、人生紙芝居には、“あなたがこのようにしっかり生き抜いたことを私たちは決して忘れません”という「労い」と「賛辞」のメッセージが込められているので、エンディングの場面においても、とても相応しいと言えます。Hさん以外でも、葬儀場の一角に、その方の人生紙芝居を飾って下さっている事例もありました。
人生紙芝居を
作ってみませんか?
大切な人へ、人生の歩みを讃え、感謝を伝える唯一無二の贈り物